コミックス ~植物病理学は明日の君を願う~ を読んでみた

作品について

作者:竹良 実

作品内容:人類の弱点は「植物」にある! 静かに潜む脅威と闘う科学者達の物語

登場人物について

叶木(かのうぎ)准教授
帝央大学の植物病理学者。植物の病と日々闘う、植物のお医者さん。

千両久磨子(せんりょうくまこ)
叶木の新米秘書。 父親を植物病の被害ゆえに亡くしている。

『植物病理学は明日の君を願う』 竹良 実 | ビッグコミックBROS.NET(ビッグコミックブロス)|小学館 (bigcomicbros.net)

読んだ感想

結論から言いますと、とても面白い作品だと感じました。私自身学生時代に植物病理を学んできたので、作中に出てくる植物の病気が出てきたとき「聞いたことある病気だ!」と喜んでしまう場面がいくつもありました。また、とあるシーンを見た際、学生時代に研究室の教授から「この直径7㎝のシャーレ1枚で育てている菌を○○県の農場の土に撒くだけで、県の××(作物の名前)を全部枯らせれる」と言われたことを思い出し、本当に植物の病気でバイオテ〇が可能であることに心底恐怖しました。

まとめ

植物病理を知らない方、学んでいない方でも分かりやすく説明がなされているので読みやすい作品だと思います。また、如何に植物の病気が恐ろしい存在であるか、感じてもらえる作品だなと思いました。身近であるにも関わらず、あまり知られていない植物の病気について知りたいという方は是非読んでもらいたいです。

植物の病気 稲編 ~イネごま葉枯病~

イネごま葉枯病とは?

イネに感染する病気であり、「いもち病」・「紋枯れ病」と並ぶイネの三大病害の一つとして数えられています。イネいもち病とは異なり、イネが若い時期に感染し、葉にゴマのような黒い病斑を形成するのが特徴です。

イネごま葉枯病菌 分生子

発生要因

ごま葉枯病はいもち病菌と同様、カビの一種であるイネごま葉枯病菌(学名:Cochliobolus miyabeanus)によって引き起こされる病気です。菌は高温でやや乾燥気味な環境条件を好み、病斑上に形成された分生子を風などによって飛散させることで感染を拡大させます。感染した種子やイネ藁が感染源となり、健全な葉に病斑を形成します。発生は夏頃に多い傾向にあります。

 

防除方法

ごま葉枯病の防除方法として以下の方法が用いられています。

・農薬(殺菌剤)の使用

・罹病葉や罹病残渣の除去

・施肥管理

多くの病原菌に当てはまりますが、感染した葉(罹病葉)が感染源となります。そのため、罹病葉や罹病残渣を圃場に放置してはいけません。焼却処分もしくは圃場から取り除くといった作業が必要です。また、ごま葉枯病は肥料不足により弱ったイネに感染しやすいです。肥料を与え、イネが弱らないように管理することで感染しにくくなります。

自分語り ~私だんびらについて~

 

皆さん初めまして、最近ブログを始めたガチ初心者のだんびらです。ブログを始めるにあたり、最初は自分の専門・趣味についてダラダラと書いていこうかと思います。よろしくお願いします。

自己紹介

とある地域の田舎(電車が2時間に1本)の小さな村で生まれました。中学に上がるまでゲームをほとんどせず、畑や山の中で走り回って遊んでいました。あまりにもヤンチャだったので、地元では問題児扱いされていました(笑)。今でも時間があれば登山や自然が豊かな場所に足を運び、木や動物の観察などを行っています。

専門分野

小学校の頃に理科の面白さに目覚め、気付いた頃には理系の人間になっていました。そこから高校時代に生物について学びたいと思い、生物全般を学生時代に学んできました。その後、実家が兼業農家であることもあり「農業に関することを学びたい」と思い大学時代に植物の病気「植物病理学」を学んできました。あまり聞きなれない学問だと思いますが、簡単に言えば植物のお医者さんになるために必要な学問です。もし詳しく知りたい方はネットで調べてみてください(私のブログでも説明しているので、良ければ見てください)。とても深く面白い学問学問です(個人的な意見)。

図:キュウリの葉に感染する菌のイメージ

 

趣味について

 1. お城巡り

専門分野でも述べたようにバリバリの理系ですが、「お城巡り」に関しては幼少期から始めている趣味で、人生で初めて見た城「大阪城」、震災前に見た「熊本城」に感銘を受けたのがきっかけです。大学時代には、バイトで稼いだお金(軍資金)でいろんな城に訪問していました。現在でも続けており、訪れた城の近くのお土産屋さんで城のイラストor名前が入った手拭いを集めることも密かな楽しみにしています。

 2. 映画鑑賞

直近で見たのは「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」・「ゴジラ-1.0」あたりです。それ以前にもいろんな映画をちょくちょく見ています。


終わりに

短くはありますが、私自身のことについて書かせていただきました。こんな感じの人間がブログを書いているのだなと思っていただければ幸いです。スローペースではありますが、ブログを書いていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

植物の病気 稲編 ~イネもち病~

イネもち病とは?

その名の通りイネに感染する病気です。「ごま葉枯れ病」・「紋枯れ病」と並ぶイネの三大病害の一つとして数えられています。欧米では、「イネの胴枯れ病(英名:Blast of rice)」、「イネの疫病(英名:Rice blight)」などと呼ばれています。古くから稲に発生する定型的な病気であり、最も恐れられてきました。いもちが広範囲に発生した圃場では十分な登熟が期待出来なくなり、大幅な減収と食味の低下を招く恐れがあります。文書に初めて登場するのは1637年の明における記録で、その後は日本(1704年)、イタリア(1828年)でも記録されています。

イネいもち病菌 分生子

発生要因

いもち病はイネがカビの一種であるイネいもち病菌(学名:Pyricularia oryzae)に感染し発病することで起きます。感染のメカニズムは、病原菌の分生子が葉に接触すると刺激で粘着質が分泌されて葉に付着します。分生子が湿度で発芽することによって付着器が形成され、そこから菌糸が葉のクチクラ層を突き破って植物の内部に侵入します。そしてそれとほぼ同時に細胞内部にメラニンと呼ばれる物質が生成され、菌の細胞壁の強度を高めます。このため、現在いもち病に用いられている殺菌剤はメラニン生成を阻害することで防除するものが多いです。


いもち病菌は胞子によって空気伝染します。空中を飛散した胞子が別のイネに付着して、そこに水滴があると繁殖します(上記で述べたようなメカニズムで繁殖する)。伝染するのは、気温が約16~30℃、イネに水滴が8時間以上付着しているような条件が多いです。天気が良いとイネは乾くため、雨が降り続くような時期に感染しやすくなります。特に梅雨の時期は発生しやすいので注意が必要です。

防除方法

いもち病の防除方法として一般的に以下の方法が用いられています。

 ・農薬(殺菌剤)の使用

 ・無病種子の使用

 ・病気に強い抵抗性品種の使用

この内、殺菌剤の使用が主流ですが、この方法で注意する点は「薬剤耐性菌の発生」です。人間に感染するウイルスと同様、植物に感染する菌でも薬剤が効かない種類の菌(薬剤耐性菌)が存在します。近年では広く用いられている殺菌剤に対して抵抗性を持つ耐性菌が相次いで発見されていて問題となっています。例として、2001年に初めて佐賀県で、防除用薬剤(MBI-D剤)に対する耐性菌の出現、2013年には大分県でストロビルリン系剤に対する耐性菌の出現が報告されています。こういった耐性菌の出現は同じ農薬を何年も使用することで、起こりやすくなります。そのためイネいもち病に効く複数の農薬を年毎に使い分けて使用することが重要です。

植物の病気 花木編 ~もち病~

もち病とは?

5月から夏にかけて発生する病気です。

葉がまるで「餅を焼いたように膨れ上がる」ような状態になることが名前の由来とされています。

初期症状として、新芽や若い葉の一部で小さなふくらみ(淡緑色や黄緑色)が出来ます。症状が進行すると、芽や葉が何倍にも肥大します。症状が悪化すると黒褐色になり、腐敗していきます。

病気が発生しやすい植物として、「アセビ」・「サザンカ」・「サツキ」・「ツツジ」・「ツバキ」などがあります。

もち病に感染したツバキ罹病葉

発生要因

担子菌に属する「Exobasidium菌」によって引き起こされます。

降雨が続き、日照が少ない時期に発生しやすくなります。

古い葉や枝には感染せず、上文でも述べたように新芽や若い葉に感染します。

病原菌は植物組織に侵入後、養分を吸収すると共に植物ホルモンを作り出し、これによって植物の細胞が刺激され、異常肥大を引き起こします。

 

防除方法

防除方法としては、➀病気になっている葉を摘み取る ②薬剤を散布する の方法が考えられます。

葉を摘み取る際は、葉が白く覆われる状態(病原菌が胞子を形成する状態)になる前に行いましょう。

薬剤を散布する場合、もち病に有効な薬剤を適切な方法で散布するように心がけましょう。

植物病理学について

 植物病理学とは?

そもそも「植物病理学とは何なのか?」と思う人がいると思います。(自分も最初はどういった学問なのか分かりませんでした。)なので、植物病理学について、簡単に説明します。

植物病理学(Plant Pathology Phytopathology)とは、植物や作物の病気の原因を突き止め、発生や伝染経路を明らかにし、病気が発生する要因あるいは発生しない要因を解明する学問です。平たく言えば、植物の病気について知り、病気にならないように対策方法を考える学問とういことです。

皆さんは生まれてきてこれまでに様々な病気に罹ってきたことかと思います。植物も人間と同様、様々な病気によって枯れてしまったり、弱ってしまうことがあります。そのため、植物が枯れたり弱らないようにするために、植物病理学という学問があるのです。

イネいもち病菌 胞子

 植物の病気とは?

では次に、「植物の病気」の定義・病気の原因・病気になる要因について説明します。

  ①植物の病気の定義

病気とはそもそも、「健康ではない状態」を指します。人の場合「咳が出る」・「熱が出る」・「体がだるくなる」といった状態がこれに該当します。植物の場合では、「根から水分や栄養が吸えない」・「生理や代謝が行えない」・「繁殖できない」ことによって、「根の腐敗」・「葉や茎の壊死」・「萎凋(しおれること)や枯死」といった症状が現れると「病気」と言います。

しかし、中には病気になっているのに、見かけ上異常が現れていない(いわゆる潜伏期など)場合や、マメ科根粒菌のように植物の生育が良くなる場合もあります。そのため、正常・異常の線引きをどこにするのかがとても難しいです。

なので、ここでは植物の病気を「外界からの生物的、非生物的要因や内部のいくつかの要因(ホルモン、遺伝子、植物が出す物質)によって、生理生化学な異常が生じ、その結果可視的な形態異常が起こり、植物の生長や繁殖が阻害される現象」と定義したいと思います。

引用:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Rice_blast.jpg 
  ②植物の病気の原因

病気の原因は一般に「病原」と言われ、下の表のようなものがあります。実際に病気が発生する場合は、様々な要因が関わっていますが、大きく分けると3つの要因「主因」・「誘因」・「素因」があります。

 ➀主因…病原体、つまり病気を発生させる最も直接的な要因のこと

 ②誘因…生育環境など間接的な要因のこと

 ➂素因…植物が持つ病気に罹りやすい性質

 

これら3つの要因は下の図のように示すことができ、「主因」・「誘因」・「素因」が揃った場合に病気は発生します。ただ、病気になるまでに一定の時間が必要な場合もあるため、これらの要因以外に「時間的要素」を加えて表す場合もありますが、今回は省かせていただきます。


 植物の病気を発生させないためには?

ここまで植物病理学、植物の病気について述べてきましたが、「ではどうやって病気を予防すればいいのか?」と考えている方がいると思います。簡潔に言えば、「主因」・「誘因」・「素因」のどれかを除くようにすることです。植物の病気はこれら3つの要因が重なった場合でのみ発生します。そのため、「薬剤で病原体を除去する」・「病気になりにくい環境づくりをする」ことで、簡単に病気を予防することができます。

もし、家庭菜園や園芸をしていて植物が病気になって困っているという方がいれば、上記で示した3つの要因を確認し、対処することをお勧めします。